Makuake

AINOTE 2——4.68億円の「紙」を検証する

Alex Ishiguro 読了目安:6分
AINOTE 2——4.68億円の「紙」を検証する
目次
  1. 1プロダクト概要
  2. 2クリエイター・プロフィール
  3. 3市場背景
  4. 4気になるポイント
  5. 5応援したいポイント
  6. 6比較・代替案
  7. 7まとめ

「10万円の紙」——ある購入者はそう書いた。画面は光らない。スピーカーもない。動画はカクつく。それでもMakuakeで4.68億円を集めた電子ペーパータブレットがある。iFLYTEKのAINOTE 2だ。

「紙のように書ける」をウリにするデバイスは山ほどあるが、会議の音声をリアルタイムで文字に起こし、AIが議事録まで自動生成する——そこまで踏み込んだ製品は他にない。問題は、その「他にない」に10万円の価値があるかどうかだ。

プロダクト概要

AINOTE 2は、中国の音声AI大手iFLYTEK(科大訊飛)が開発した10.65インチE-Inkタブレットだ。厚さ4.2mm、重さ295gという数字は、10インチ前後のE-Inkタブレットとしては最薄級〔確認済〕。Wacom共同開発のスタイラスで手書きメモを取りながら、16言語の音声をリアルタイムでテキスト化し、iFLYTEKが「ChatGPT-5搭載」と謳うAIエンジンが要約まで生成する〔確認済:メーカー公称〕。Android 14搭載でGoogle Playにも対応するが、E-Inkゆえに汎用タブレットとしての快適さは期待しないほうがいい。

iFLYTEK AINOTE 2という、世界最薄のAI搭載電子ペーパータブレットが木製テーブルに置かれ、ペンで操作されている場面。
出典:Amazon

2025年9月29日に開始されたMakuakeキャンペーンでは、目標50万円に対し約4.68億円を達成〔確認済〕。キャンペーン価格は本体のみの標準セットで6万9,000円〜7万4,100円、ケース付きプレミアムセットで6万9,300円〜7万8,900円(税込・送料無料)。一般販売予定価格は本体9万8,800円〔確認済〕。

なお、2025年1月にはiFLYTEKの前モデル「AINOTE Air 2」(8.2インチ)が同じくMakuakeで約1.3億円を集めているが、本稿ではAINOTE 2のキャンペーンに絞って検証する。

クリエイター・プロフィール

iFLYTEK(科大訊飛)は1999年設立、本社は中国・合肥(安徽省)深圳証券取引所上場(002230.SZ)の中国AI大手だ〔確認済〕。音声認識と自然言語処理を主力とし、MITテクノロジーレビューの「世界で最もスマートな企業50」にも選出された実績を持つ。日本法人「iFLYTEK JAPAN AI SOLUTIONS株式会社」は港区芝公園にオフィスを構え、前回のAINOTE Air 2キャンペーンは予定通り配送を完了。現在はヨドバシカメラやビックカメラでも一般販売されている。スタートアップの夢物語ではなく、インフラのある企業による日本市場参入だ。

市場背景

E-Inkタブレット市場ではreMarkableやBOOXが先行していたが、「手書き×音声文字起こし×AI要約」を1台でこなす製品は日本市場にほぼ存在しなかった。会議のたびにボイスレコーダー、ノート、PCを使い分けるワークフローに疲れた層——とりわけ議事録作成が日常業務に組み込まれたビジネスパーソンが、AINOTE 2のコアターゲットだ。

iFLYTEK製のデジタルノート端末。ペン付きのタブレット型デバイスで、音声入力と手書き機能を備えている。
出典:Amazon

ではなぜMakuakeなのか。iFLYTEKの営業担当者がプレスイベントで語った理由はシンプルで、「家電量販店ではどの売り場に置けばよいのかわかりにくい」〔確認済〕。既存の売場カテゴリに収まらない製品にとって、Makuakeは資金調達の場ではなく、認知獲得と先行販売のチャネルとして機能している。

気になるポイント

iFLYTEK AINOTE電子ノートとスタイラスペンのセット製品です。
出典:smhn

前モデルから消えた機能。AINOTE 2はAir 2より大画面・薄型になった一方、フロントライト(画面照明)、スピーカー、カメラが省かれた。暗い場所では読めず、録音の再生にはBluetooth機器が要り、紙資料を本体で直接スキャンすることもできなくなった。FAQには記載があるが、キャンペーンページの目立つ場所では説明されていない〔確認済〕。価格が上がったのに機能が減っている部分があることは、購入前に把握しておきたい。

「生涯無料」のアスタリスク。録音・文字起こしの「生涯無料」には「サービスが存続する限り」という注釈が付いている〔確認済〕。加えて2026年2月にはVIPサブスクリプションが導入され、クラウド同期の範囲(無料プランでは過去50日以内に編集したノートに限定)やアプリ上での編集機能が有料プランに限定された〔確認済〕。基本的な文字起こし・AI要約は引き続き無料だが、「無料」の境界線が時間とともに動きうることは想定しておくべきだろう。

音声データの行き先。iFLYTEKは中国企業であり、音声データはクラウドで処理される。公式にはAWSでの保存とエンタープライズグレードのセキュリティを掲げているが、社内の機密情報を扱う会議で使うなら、何を録音し何を録音しないか、自分でルールを決めておく必要がある〔確認済〕。

9万8,800円という価格帯。一般販売価格はiPad(無印)やエントリークラスのノートPCが買える水準だ。AI文字起こしを週に何度も使う人にとっては投資回収できる金額だが、「たまに便利そう」程度の動機なら割高に感じるはずだ。この製品の価値は、使用頻度にほぼ比例する。

応援したいポイント

上場企業の実績。深圳上場企業が日本法人を持ち、前回キャンペーンを完走し、一般小売にも展開済みという背景は、Makuake案件としては異例の安定感がある〔確認済〕。AINOTE 2も2025年12月8日から一般販売を開始しており、配送トラブルの報告は確認されていない。

電子書籍リーダーにペンで手書き入力している様子。デスクには複数のデバイスが置かれている。
出典:global

唯一無二のポジション。手書き・録音・文字起こし・AI要約を一台で完結させる製品は、現時点でAINOTEシリーズ以外にほぼ見当たらない。Business Insider Japanのハンズオンなど複数の専門メディアが書き味と文字起こし精度を高く評価しており〔確認済〕、iF DESIGN AWARD 2026も受賞した。コンセプトだけでなくプロダクトとしての完成度が伴っている。

比較・代替案

AINOTE 2の「会議をまるごとデジタル化する」用途に近い製品を探すと、選択肢はいくつかの方向に分かれる。

同じiFLYTEKのAINOTE Air 2(8.2インチ、実売6万〜7万6,800円)は、画面は小さいがフロントライト付きでAI文字起こし機能もほぼ同等。持ち運び重視なら有力だ。

Android搭載E-InkタブレットとしてBOOX Tab Ultra C Pro(10.3インチ、約10万9,800円)はカラー表示ができ手書き性能も高いが、音声文字起こし機能は内蔵していない。

文字起こしだけを切り出すなら、Anker Soundcore Work(2万4,990円・税込)のようなAIボイスレコーダーと紙ノートの組み合わせも選択肢になる。ただし無料のスタータープランでは月300分までの文字起こしに限られ、それを超えるとProプラン(月額2,680円)が必要になる。AINOTE 2の基本文字起こしが追加費用なしである点と比較すると、使用頻度次第でトータルコストが逆転する。

手書きメモのデジタル化に絞るなら、Kindle Scribeが半額以下で手に入る。ただし手書き文字のテキスト変換機能はない。

「書く」体験に全振りするならreMarkable 2(5万〜6万5,000円)も根強い支持がある。

まとめ

AINOTE 2は、詐欺的なキャンペーンでもなければ、誇大広告の塊でもない。上場企業が作り、前回キャンペーンも完走し、すでに量販店の棚に並んでいる製品だ。気になるポイントで挙げた省略機能や条件付き「無料」の懸念はあるものの、AI文字起こしと手書きメモの統合というコンセプトには確かな需要があり、4.68億円の支持は伊達ではない。ただし9万8,800円は「なんとなく」で払える金額ではない。

いま中古で検討している人へ。発売から日が浅く中古の流通量は少ないが、見つけた場合はファームウェアのバージョンとiFLYTEKアカウントの紐付け解除を必ず確認すること。フロントライト非搭載は写真ではわからない——二子玉川 蔦屋家電などの展示機で実際の視認性を確かめてから判断したい。

これからAI電子ノートを買いたい人へ。会議の文字起こしを頻繁に使うならAINOTE 2かAir 2が第一候補。予算を抑えたいならAnker Soundcore Workと紙ノートの分離型ワークフローも検討に値するが、月300分を超えるならサブスク費用(月額2,680円)も計算に入れること。手書き中心ならKindle ScribeかreMarkable 2。まず自分が「何を一番デジタル化したいか」を見極めるのが先だ。

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Alex Ishiguro

編集長

MakuakeやCAMPFIREで話題になった商品の「その後」を追うメディアを運営。約束されたものが実際に届いたのか、消えてしまったのかを記録する。

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