完全ワイヤレスイヤホンに有線接続を足す——2020年当時、この発想は確かに新鮮だった。声優・オーディオマニアの小岩井ことりとパソコン周辺機器メーカーのオウルテックが手を組み、Makuakeに送り出した「KPro01」は、開始45分で1,000万円を突破。最終的に支援総額1億6,607万円超・支援者10,003人・達成率約5,536%を記録し、Makuake Of The Year 2020 GOLDを獲得、当時の歴代支援総額ランキング3位に食い込んだ〔確認済——日経クロステック/Makuake公式note〕。
キャンペーン期間は2020年2月19日から4月29日までの約70日間で、終了から約6年が経過している。一般販売価格2万円超の完全ワイヤレスイヤホンにとって、6年は市場環境が一変するに十分な時間だ。2Way構想は支援者の期待に応えられたのか。有線接続時の実力・中古市場での評価・現行の購入手段を検証する。
プロダクト概要
KPro01はBluetooth 5対応の完全ワイヤレスイヤホンでありながら、2pinカスタムIEM規格コネクタを介してUSB Type-C有線接続でも使える。有線時は充電と音楽再生を同時にこなせる設計で、音楽ゲームでの低遅延用途を想定した〔メーカー公称——オウルテック公式、独立検証なし〕。
チップはQualcomm QCC3020、aptX/AAC/SBC対応。6mmダイナミックドライバ、インピーダンス16Ω、再生周波数20Hz〜20kHz。IPX5相当のナノコーティングで水洗い可能をうたう〔メーカー公称——オウルテック公式、独立検証なし〕。レジン製ハウジングは3Dプリンター出力で、カスタムIEMを意識した外観に仕上げている。
一般販売価格は標準セット21,780円(税込)、シルバーケーブルセット25,080円(税込)。Makuake応援購入の平均単価は支援総額÷支援者数で約16,600円。
クリエイター・プロフィール
株式会社オウルテック(神奈川県海老名市)。自作PC向け電源ユニットで知名度を確立し、スマートフォンアクセサリーやドライブレコーダーへ事業を拡大してきた。2026年4月現在も事業を継続しており、KPro01のサポートページも維持されている。
小岩井ことりは声優業のかたわらオーディオマニアとしても活動し、雑誌連載の実績を持つ。本プロジェクトではオウルテック企画部の一員として開発に参加したとされるが、音響設計への具体的な関与度は公開されていない〔メーカー公称——日経クロステック、独立検証なし〕。ポタフェスでの試聴を経て「コラボではなく開発したい」という小岩井の一言が企画の起点になった。
市場背景
2018年頃から完全ワイヤレスイヤホン市場は急拡大し、低価格帯から高級帯まで毎月新製品が投入される群雄割拠にあった。オウルテックがオーディオメーカーとして認知を獲るには、既存ブランドとの正面衝突を避け明確な差別化軸が要る。「有線でも使える完全ワイヤレス」というニッチは、音楽ゲーマーとオーディオマニアの二つのコミュニティを橋渡しする狙いがあり、小岩井ことりの知名度は接着剤として機能した。量販店バイヤーに認知のないオーディオ新参が先に需要を証明する場として、Makuakeの選択は合理的だった。
気になるポイント
有線接続時のノイズ問題。KPro01最大の売りであるType-C有線接続で「ほぼ確でノイズが乗ります」とKOH氏が報告している(KOHのいろいろ、2021年掲載・月日未特定)。Xperia XZ1でもNintendo Switchでも再現し、2ヶ月使った結果「有線接続をほとんど使わなくなった」。音楽ゲーム向け低遅延という核心の訴求が、ノイズで実用性を損なわれた。
Bluetooth時の音質落差。メタラーのヘッドホンブログ(@headmetalinfo、2021年掲載・月日未特定)は「ワイヤレスモードの音質は有線時より2段階落ちる。低音が緩く締まりがない」と評した。イコライザ使用時に片側だけ音量が下がる不具合も報告されている。
筐体の大きさと操作性。同ブログはさらに「筐体が大きく完全ワイヤレスとしては装着感が悪い」「タッチパネルの面積がやたら狭く使いにくい」と指摘した。2pinコネクタ採用がカスタムIEM的な所有感を生む一方、筐体サイズとのトレードオフは無視できない。
「市場に存在しない機能」の射程。オウルテックはType-C有線+Bluetooth無線切替を「当社が調べた限り市場に存在しない」と訴求した。2020年の国内市場で同方式が少なかったのは事実だが、声オタおにじくん氏(声学審問H!、2020年5月2日)はTINHIFI T2000など類似コンセプトの存在を挙げ、支援見送りの理由とともに5つの懸念点を公開している。「世界初」の独立確認はない。
価格.comでは平均満足度1.68/5.0(3件)と厳しい評価が残る〔確認済——価格.com、2026年4月確認〕。中古市場での価格下落も早く、1万円を割り込む水準に達した〔確認済——メルカリ/ヤフオク相場、2026年4月確認〕。
応援したいポイント
2Wayという明快なコンセプト。有線と無線を一台でまかなう構想は、2020年に1万人超を動かすだけの求心力があった。Phile-webは2021年1月29日のレビューで2Wayコンセプトと有線時の音質を肯定的に取り上げている〔要検証——ソースページ現行版で該当記述未確認〕。
有線接続時の音の鮮明さ。eイヤホン公式スタッフブログ(2020年)は有線サウンドに好意的な評価を寄せた〔前述と同様に要検証〕。2pinカスタムIEM規格の採用により、好みのリケーブルで音質を追い込む楽しみが残されている点は現在でも価値を失っていない。
日常の使い分けが成立する。リロさん(リロさんのTOYBOX、2020年12月13日)は有線・無線の切り替えと装着安定性を評価した〔前述と同様に要検証〕。通勤はワイヤレス、作業中は有線という運用は、他の完全ワイヤレスにはない体験だ。
名前付きの個人レビュアーはリロさん(リロさんのTOYBOX)の1名のみ確認できた。Phile-webとeイヤホンスタッフブログはレビューの存在は確認済みだが、執筆者個人名が特定できていない。
比較・代替案
KPro01は楽天市場での新品在庫が確認できず、一般販売も在庫限りの状況だ。現行世代の完全ワイヤレスイヤホンから代替候補を3機種挙げる。
SONY WF-1000XM5。ノイズキャンセリング性能と音質で業界基準を更新し続けるフラッグシップ。有線接続には非対応だが、Bluetoothだけで音質を完結させるアプローチは、KPro01が2Way構想で目指した到達点の別解とも言える。
Anker Soundcore Liberty 4 NC。Bluetooth 5.3、ウルトラノイズキャンセリング3.0搭載で50時間再生。KPro01の標準セットと近い価格帯で、コストパフォーマンス重視の選択肢になる。
※「Anker Soundcore Liberty 4 NC」は現時点で楽天市場・Amazon・公式ストアで新品販売が確認できませんでした。中古市場やオークションサイトでの取り扱いがある可能性があります。
JVC HA-A30T2。ノイズキャンセリングとマルチポイント対応、Bluetooth 5.3、IPX4防滴。国内メーカーの安心感とバランスの取れた機能構成が持ち味だ。
まとめ
KPro01は「有線でも使える完全ワイヤレス」という一点突破のコンセプトで1万人超の支援と1億6,600万円超の資金を集め、Makuake Of The Year 2020 GOLDに輝いた。2020年の完全ワイヤレス市場に2Wayという選択肢を提示した存在感は、6年を経ても健在だ。
一方で、Type-C有線接続のノイズ・Bluetooth音質の落差・筐体サイズ・「市場に存在しない」訴求の検証という4つの論点は、いずれも購入判断に直結する。とりわけ有線ノイズは核心機能への影響であり、購入前に把握しておくべき事実だ。
いま中古で検討している人へ。中古価格は大幅に下落しており入手は容易だが、Type-C有線接続のノイズは個体差ではなく仕様上の問題として報告されている。有線メインで使いたいなら、2pinリケーブルでΦ3.5mmアナログ接続に切り替える前提で検討するのが現実的だ。
これからKPro01を買いたい人へ。楽天市場での新品在庫は確認できず、オウルテック公式ストア(direct.owltech.co.jp)の残在庫が最後の新品購入手段となる可能性が高い。2020年発売のBluetooth 5・QCC3020搭載機である点を踏まえ、現行世代のBluetooth 5.3対応機と機能・音質を比較した上で判断してほしい。
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Alex Ishiguro
編集長
MakuakeやCAMPFIREで話題になった商品の「その後」を追うメディアを運営。約束されたものが実際に届いたのか、消えてしまったのかを記録する。
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