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4.6億円の電動チェア「LiberNovo Omni」を検証する

Alex Ishiguro 読了目安:9分
4.6億円の電動チェア「LiberNovo Omni」を検証する
目次
  1. 1プロダクト概要
  2. 2クリエイター・プロフィール
  3. 3市場背景
  4. 4気になるポイント
  5. 5応援したいポイント
  6. 6比較・代替案
  7. 7まとめ

椅子に10万円を払う。ハーマンミラーやスチールケースが当たり前になったおかげで、日本のデスクワーカーにとってもはや珍しい決断ではない。だが「電動で背中に自動フィットする椅子」にクラウドファンディングで4.6億円——となると話は変わる。

Makuakeで「チェア部門歴代1位」を謳い、約5,000人のサポーターを集めた電動ワークチェア「LiberNovo Omni」。2025年12月のキャンペーン終了から約4カ月が経ったが、配送遅延の報告が出ており、日本語圏のレビュー記事はすべてメーカー提供品によるもの——サポーターが自腹で使った声がまだ一つも聞こえてこない。だからこそ、いま検証しておく意味がある。


プロダクト概要

LiberNovo Omniは、背もたれに8枚のフレキシブルパネルと16個のジョイントを組み込んだワークチェアだ。ボタンひとつでランバーサポートの深さを電動調整でき、ユーザーの背中のS字カーブに沿うように形状が変化する。5分間の「脊椎ストレッチモード」も搭載しているが、マッサージチェアのように揉む・叩く機能はない。onesuite(2025年11月)のレビュアーもこの点を明確に指摘している〔確認済〕。

LiberNovoブランドの高機能オフィスチェアに座る女性が、デスク周りの複数のモニターで作業している様子。
出典:basic-tutorials

バッテリー駆動でコードレス。公称では「毎日1回のストレッチと5回の腰調節」で最大30日持つとされるが、複数のレビュアーが実使用で2〜3週間と報告しており、こちらが現実的な目安だろう〔確認済〕。最大160°の4段階リクライニングは「脊椎ストレッチモード」の姿勢確保に直結し、椅子本体の重量22kgは一般的なメッシュチェアより数kg重い——頑丈だが気軽には動かせない。キャンペーン価格は超超早割の¥87,500からマクアケ割の¥116,600まで、一般販売予定価格は¥171,600とされている。

なお、LiberNovo Omniは2025年6〜8月にKickstarter(HK$約8,000万、約11,600人)で先行キャンペーンを実施している。本稿が検証するのは日本向けMakuakeキャンペーン(2025年10月14日〜12月16日)だ。


クリエイター・プロフィール

開発元は香港法人LIBERNOVO HK CO., LIMITED。2023年11月設立で、親会社は深圳の青贤智创(深圳)有限公司〔確認済——Dealroom.co〕。CEOの王振旭(Alex Yan)氏はドローン世界最大手DJIおよびロボット掃除機メーカーNarwalでの勤務経験を主張しているが、具体的な役職や在籍期間を裏付ける第三者情報は見つかっていない〔未確認〕。Tom’s Hardware(2025年11月)をはじめ複数の英語メディアがこの経歴に言及するが、いずれもLiberNovo側の自己申告を引用したものだ。

日本での輸入事業者は株式会社TOLAI(東京都中央区、2023年3月法人登記)。「40件以上のCFプロジェクトを実施、総額30億円以上」を自称するが、個別プロジェクトの実績は確認できなかった〔未確認〕。Lancersプロフィールでは「2019年設立」とされており法人登記の2023年と矛盾する〔矛盾する情報あり——Lancers vs Gビズインフォ〕。登記住所は1,300社以上が同居するバーチャルオフィスと推測される〔確認済——アラームボックス〕。さらに、Makuakeキャンペーンページにはカスタマーサポートの連絡先としてLiberNovo本社のメールアドレス(japan_service@libernovo.com)が記載されており、輸入事業者TOLAIを経由しない導線になっている。4.6億円の日本向けプロジェクトの窓口がバーチャルオフィス法人を素通りしている構図は、アフターサポートの行方に疑問を残す。


市場背景

コロナ禍のリモートワーク定着でハーマンミラーやスチールケースの知名度が上がり、10万円超のチェアが「自己投資」として語られるようになった。国内メーカーのオカムラやイトーキも価格改定を重ね、海外勢との差は縮まっている。

LiberNovo Omniが狙うのは、ハーマンミラー Aeron(約20万円〜)やSteelcase Leap(約15万円〜)の半額帯だ。キャンペーン価格¥87,500〜¥116,600は、エルゴヒューマンやCOFO(COFO自体もMakuake発のブランドだ)といった人気の中価格帯チェアと真っ向から競合する。ブランド認知ゼロの状態で日本の量販店棚を獲るのは不可能に近い。Makuakeの「応援購入」モデルは、実績のない海外ブランドにとって最も効率的な日本上陸手段になっている。


気になるポイント

「歴代1位」は自社調べ。キャンペーンタイトルに堂々と掲げられた「歴代1位」だが、PR TIMESリリースには毎回「※自社調べ」の注記がある。Makuake公式の認定は「応援購入1億円超」「サポーター1000人超」のGood Project Markのみで、「歴代1位」をMakuake側が認定した事実はない〔確認済——PR TIMES、Makuakeページ〕。25時間で1億円到達というスピード記録も「自社調べ」だ。

「自動フィット」の中身は電動ランバー調整。「千人千種の身体にワンタッチで自動フィット」というキャンペーンコピーは、あたかもロボットが背中全体を自動で包み込むような印象を与える。しかし電動で制御されているのはランバーサポートの深さ調整のみだ。背もたれが多様な体型に沿う柔軟性は、8枚のパネルと16のジョイントによるパッシブな機械構造(FlexFitシステム)が担っている——つまり電動ではない。電動ランバー調整自体は革新的なアプローチだが、マーケティングが受動的な構造設計と能動的な電動制御を意図的に混同している点は指摘しておきたい〔確認済——複数レビュー〕。

青く発光する触手が機械装置に巻きついている、SF的なシーンです。
出典:libernovo

一般販売予定価格¥171,600の不自然さ。キャンペーンは「最大51%OFF」を訴求するが、基準となる¥171,600は実勢からかけ離れている可能性がある。米国での実売は$803〜900(約12〜14万円)。Tom’s Hardware(2025年11月)も定価での販売実績を疑問視している〔確認済〕。もっとも、これはクラウドファンディング業界に蔓延する慣行であり、LiberNovoだけの問題ではない。

「元DJI・Narwal技術者集団」の独立検証なし。キャンペーンの信頼性を支える柱だが、誰がどの企業でどんな役職に就いていたのか、具体的な情報は一切公開されていない。英語メディアの言及もすべてLiberNovo側の主張の引用にとどまる〔未確認〕。

「150人の背骨データを2年間追跡」の不透明さ。研究の方法論、倫理審査、研究機関名、発表論文のいずれも公開されていない。会社設立が2023年11月であることを考えると時系列上は辛うじて成立するが、設立前から研究を開始していたのかどうかも不明だ〔未確認〕。

配送遅延と迫るキャンセル期限。2026年1月末の配送完了予定に対し、最新の活動レポート(2026年1月22日)には「度重なる配送遅延」の文言が確認できる〔確認済——Makuake活動レポートタイトル〕。全文はサポーター限定で閲覧できず、2026年4月時点での配送完了状況は不明だ。リスク&チャレンジ欄には「配送予定月から3カ月を超えた場合は希望者にキャンセル対応」との記載があり、その閾値は2026年4月——つまり今まさに到来している。にもかかわらず、キャンセル対応に関するLiberNovoおよびTOLAIからの公式声明は確認できていない。

青色と黒色の高機能オフィスチェアが、木製床の部屋に置かれている。
出典:imaichido

日本語レビューの全数がメーカー提供品。onesuite、Dream Seed、Impress Watch、Real Sound、MATTU SQUARE——確認できた日本語レビュー記事8件以上はいずれも「メーカーより提供を受けて」の開示付きだ。自費購入の独立レビューは日本語圏に存在しない〔確認済〕。海外ではSleek Setups(2026年3月)が提供品を受け取りつつも、別途Kickstarterで自費購入した製品でもレビューを行った唯一のレビュアーだった。

提供品レビューから見える現実。提供品レビューとはいえ、率直な指摘は出ている。onesuite(2025年11月)は「ストレッチは正直なところ、人を選ぶ機能」「結構お腹がグリンと押される」と体格による相性差を報告。Dream Seed(2025年10月)は操作部が肘に当たって意図せずランバーサポートが作動する問題や、アームレストに体重をかけると外側にずれる不安定さを指摘した。Sleek Setups(2026年3月)はLサイズ座面について、Kickstarter時はMサイズのみでLは後から追加された経緯に触れ、フォームパッドを延長しただけでフレーム支持がなく荷重で圧縮されると報告している。

配送後のサポーター・レビューはゼロ。日本のMakuakeサポーターによる実使用レビューは、Twitter/X・価格.com・Amazon等を含め2026年4月時点で発見できていない。5,000人近いサポーターが沈黙しているのか、そもそも届いていないのか——どちらにせよ異例の状態だ。


応援したいポイント

製品としての完成度。Tom’s Hardware(2025年11月)はクッションの座り心地を高く評価し、onesuite(2025年11月)も「フィットやストレッチより、実はクッションが一番良い」と述べた。電動ランバーサポートは従来のダイヤル式やメッシュテンション式では不可能だったフィッティング精度を実現しうるアプローチであり、iF デザインアワード2026(Product Design – Beauty/Wellness部門)の受賞もその設計思想への評価だろう〔確認済——PR TIMES、2026年3月〕。

LiberNovo Omni: The World's First Dynamic Ergonomic Chair
出典:techaeris

実物を触らせる自信。キャンペーン中にヨドバシカメラAkiba、蔦屋家電+(二子玉川)、蔦屋書店代官山店、イオンレイクタウンmori等で実機展示を行い、体験会の予約枠が完売するほどの反響を得た〔確認済——PR TIMES〕。実物を触らせる自信があるということは、ペーパープロダクトではない証左だ。


比較・代替案

4.6億円を集めたキャンペーンの配送状況が不透明ないま、「確実に手に入る椅子」を検討するのは合理的な選択だ。

エルゴヒューマン プロ2 オットマン——独立型ランバーサポートの完成度で腰痛持ちからの支持が厚い。オットマン内蔵で仮眠にも対応。¥129,900前後とLiberNovo Omniのキャンペーン価格よりは高いが、実績と保証で上回る。

オカムラ シルフィー——日本メーカーの安心感は何物にも代えがたい。バックカーブアジャスト機構でS/M/Lの背面カーブを選べるのはLiberNovoの「自動フィット」とは異なるアプローチだが、アフターサポートの確実性では比較にならない。¥93,720前後。

ハーマンミラー セイルチェア——12年保証、高いリセールバリュー。¥113,300前後とLiberNovoのマクアケ割と同等の価格帯で、ブランドの信頼性を買える。

Steelcase Karman——最新ハイエンドの軽量タスクチェア。¥130,000〜¥180,000とLiberNovoの一般販売予定価格と重なる帯域で、Tom’s Hardwareも直接的な競合として名を挙げた。


まとめ

LiberNovo Omniは、電動ランバーサポートという明確な差別化ポイントを持ち、海外レビュアーからも座り心地で高い評価を得ている実在の製品だ。Kickstarterで約HK$8,000万、Makuakeで4.6億円という資金調達規模は、消費者の期待の大きさを物語っている。

ただし、創業者経歴〔未確認〕、研究データ〔未確認〕、サポーター・レビュー皆無、配送遅延とキャンセル期限の到来——見えていない部分が多すぎる。保証はフレーム5年・電子部品2年だが、この椅子の価値の核心である電動機構が2年保証にとどまる点は、設立3年目の企業の製品として冷静に受け止める必要がある。輸入事業者TOLAIのバーチャルオフィス登記、設立年の矛盾、カスタマーサポート導線がTOLAIを素通りしている事実も、4.6億円を預かる組織としては心許ない。

いま中古で検討している人へ——LiberNovo Omniの中古市場はまだほぼ存在しない。もし出回り始めたら、電動部品のバッテリー劣化とアクチュエーター寿命が最大のリスクだ。保証の移転可否をメーカーに確認すること、電動機能の全動作チェック(ランバー調整・ストレッチモード)を購入前に実施すること、座面サイズ(M/L)の確認を怠らないこと。Lサイズ座面にはフレーム支持の構造的な弱点が指摘されている。

これからワークチェアを買いたい人へ——「確実に届く」「確実に修理できる」を優先するなら、オカムラ シルフィー(¥93,720〜)かハーマンミラー セイルチェア(¥113,300〜、12年保証)が堅実な選択だ。腰痛対策にオットマンも欲しいならエルゴヒューマン プロ2(¥129,900〜)。予算に余裕があり最新のハイエンドを求めるならSteelcase Karman(¥130,000〜)。いずれも、実績あるメーカーの確立されたサポート体制のもとで購入できる。

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A

Alex Ishiguro

編集長

MakuakeやCAMPFIREで話題になった商品の「その後」を追うメディアを運営。約束されたものが実際に届いたのか、消えてしまったのかを記録する。

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