PowerShot PICK は、キヤノンが2021年1月29日から4月28日までMakuakeで実施した自動撮影カメラのクラウドファンディングで、キャンペーン終了から約5年が経過した。開始10分で支援総額1,000万円、24時間で6,500万円、開始4日で1億円を突破し、当時のMakuake史上最速1億円達成記録を塗り替えた〔確認済——PR TIMES 2021年2月/Impress DC Watch 2021年2月〕。それまでの記録だったEcoFlow Japanの「RIVER 600シリーズ:11日で1億円」〔確認済——PR TIMES マクアケ 2021年2月〕を大幅に上回る数字である。最終支援総額と支援者数はキャンペーンページの確定値が現時点で参照できず〔未確認〕。小さなロボットが家族を自律撮影する攻めたコンセプトは、5年経ったいまどんな評価を残しているのか——ファームウェア更新の継続、暗所耐性・バッテリー持ちという実使用上の制約、価格.comで約38,800円まで下がった中古相場〔確認済——価格.com 2025年〕を踏まえ、2026年に改めて選ぶ意味を検証する。
プロダクト概要
被写体を自動で「見つける・理解する・撮る」ことを掲げたニューコンセプトカメラだ。キヤノンの映像処理技術と独自アルゴリズムを組み合わせ、周囲を見回して顔や動きを認識、パン・チルト・ズームを自動調整して「良いシーン」と判定した瞬間に静止画または動画を記録する。特定の人物に「お気に入りマーク」を付けると優先撮影する機能も備える。手ぶれ補正機構を内蔵し、スマートフォン専用アプリ経由で撮影データの閲覧・共有が可能。Makuakeの応援購入価格は、本体+充電ドックの早期割引が40,900円(税込)、限定数のVelbon製三脚セットが42,900円(税込)〔確認済——Impress DC Watch 2021年2月/モーターマガジンcameraman 2021年1月〕。一般販売は2021年11月26日に開始され、価格.comの最安値は2025年時点で約38,800円まで下がっている〔確認済——価格.com 2025年〕。
クリエイター・プロフィール
製品を企画・販売するのはキヤノンマーケティングジャパン株式会社(キヤノンMJ)、製品開発は親会社のキヤノン株式会社が担う〔確認済——PR TIMES 2021年2月〕。キヤノンは EOS・PowerShot という長期ブランドを擁する光学機器・映像機器の世界的メーカーで、Makuake への出品はベンチャー色のない大手による「新コンセプトの市場検証」という位置づけとなる。キャンペーン終了から約5年経った2026年4月時点でも、キヤノン公式サイト(personal.canon.jp)には PowerShot PICK の製品ページが現存し、生産完了リストには掲載されていない〔確認済——2026年4月確認〕。2023年1月18日にファームウェア Ver.1.4.0 を配信しており、発売から約5年の時点で公式サポートが継続中である〔確認済——canon.jp サポート〕。
市場背景
家族の日常をスマートフォンで撮り続けるなかで「撮影している自分が写真に入れない」という慢性的な不満がある。GoProやInsta360のウェアラブルカメラ、Sony ZVシリーズのVlogカメラがこの隙間を埋めてきたが、いずれも「人間が構える/装着する」操作が前提だった。PowerShot PICKはそこに「置いておけば勝手に撮る」という自律撮影を持ち込んだ希少なカテゴリに属する。キヤノンがMakuakeを選んだのは、4万円台・子育て世帯という条件で、量販店陳列より熱量の高い先行コミュニティで市場反応を測ることに意味があったからだろう。結果として4日で1億円という数字はカテゴリ需要の存在を証明した。一方で発売後の一般流通では話題性が短期で収束し、現在は価格.comで約38,800円まで下がっている。大手ブランド製品としては緩やかな値崩れで、玉数が絞られた証でもある。
気になるポイント
「AIロボットカメラ」という呼称の捻れ。TechCrunchほか複数の第三者メディアが「AIロボットカメラ」と呼んだが、キヤノン自身は製品ページ・プレスリリースとも「独自の映像処理技術」「独自アルゴリズム」という表現に留め、「AI」や「ディープラーニング」という言葉を公式キャッチコピーに採用していない〔確認済——知財図鑑/Impress Watch 2021年2月〕。顔認識・追尾・構図調整が機能として実在することは疑いないが、「AI」を期待した支援者と「独自アルゴリズム」と説明するメーカーの間で購入期待のズレが生まれやすい。
暗所と逆光で画質が崩れる。キヤノン公式ページも「暗い場所での撮影では画質が悪化する場合がございます」と明示している。夜間の室内シーンが子育て世帯の典型用途であることを考えると、この制約は実使用の重心に直撃する。価格.comの評価スコアは5点満点中3.35(8件)で中程度の水準だ〔確認済——価格.com K0001398586〕。
バッテリーとUSB PD非対応。価格.comの複数レビューで、バッテリーが約1時間半で半分以下に落ちるため外出時はモバイルバッテリー必携、かつUSB PD非対応で急速充電が活きないという指摘が集積している〔確認済——価格.com複数件、投稿者は匿名〕。
Bluetoothペアリングが1台のスマホに固定。同じく価格.comの匿名レビュー複数で、ペアリング先を切り替えるたびに再設定が必要な煩雑さが報告されている。家族で共有するデバイス設計としては粗さが残る部分だ。
発送遅延が約2ヶ月発生。当初2021年7月末発送予定の支援者分が9月21日以降に、追加分1,000台が9月25日以降の順次発送に延期された〔確認済——Makuakeキャンペーンページ活動報告 2021年9月1日〕。延期理由はパン・チルト機構の量産段階での調整難航と伝わっているが、延期理由の公式説明については〔未確認〕。
本件について、名前付き個人の批判的レビューは0件に留まった。価格.comの匿名レビュー欄に同種の懸念が集積しているため事実として記載したが、SNS・個人ブログ・note等での名指しの批判的証言は確認できなかった——話題性の強いコンセプトに対し、公開の場での批判的追跡記事が手薄な状態で発売5年を経過している。
応援したいポイント
撮り手が家族の輪に戻れる。note.comで購入レポートを公開しているTakahashi Toshio氏は、子どもが生まれたタイミングで購入し「撮り手が手放しで動けるのが良い」「4〜5万円で良かった」と肯定的に評価している〔確認済——note.com/takahashi1040 2021年〕。スマートフォンでは常に誰かが構える必要があるが、自律撮影カメラは家族写真の物理的構造そのものを変える。
偶然撮れた一枚の価値。Canva公式クリエイター・イラストレーターの島田あや氏は、自身のnoteで「撮影者いらずの自動カメラ」としてPowerShot PICKを紹介し、子どもや日常のシーンを撮影した実例をレビューしている〔確認済——note.com/shimatune 2022年〕。構えて撮る写真には入らない自然な表情が記録される点を評価している。
「コンセプトカメラ」であることの納得感。ユーザー名kznrnariwaの のり氏は「CanonのコンセプトカメラPowerShot PICKを購入しました」と題した購入レポートをnoteで公開している〔確認済——note.com/kznrnariwa 2021年末〕。単なるガジェットではなく「カメラメーカーの実験」として受け取っている姿勢がうかがえる。
発売から5年経っても生きているサポート。2023年1月18日のファームウェア Ver.1.4.0 配信、2026年4月時点で公式ページが生産完了リストに載らず保守継続中という事実は、クラウドファンディング発のプロダクトとしては珍しい息の長さだ。Makuake案件にありがちな「プロジェクト終了=事実上のサポート終了」という構造的不安とは対照的な状態にある〔確認済——canon.jp サポート/2026年4月確認〕。
なお、名前付きレビュアー3名はいずれも note.com の投稿者で、引用元プラットフォームが単一に集中している。Impress Watch・DC Watch・特選街・Rentio等のメディア記事にもレビューは存在するが、媒体企画・PR記事と判別できるため個人購入者レビューとは性質が異なる。購入検討にあたっては引用元の偏りを踏まえて読み取ってほしい。
比較・代替案
Sony VLOGCAM ZV-1F。ソニーがVlog撮影向けに設計した広角コンパクト機で、手持ちで自分撮りを中心とした家族記録に近い使われ方をされる。置き撮りによる自律撮影という発想ではないが、「撮り手の顔を撮る」という目的に対する別解として市場に存在する選択肢だ。
※「Sony VLOGCAM ZV-1F」は現時点で楽天市場・Amazon・公式ストアで新品販売が確認できませんでした。中古市場やオークションサイトでの取り扱いがある可能性があります。
Insta360 GO 3S。Insta360の4Kクリップオン型アクションカメラで、服や小物に装着して置き撮りやハンズフリー撮影が可能。PowerShot PICKのような自動構図調整は備えないが、「人間が構えない」点、家族の中に溶け込む小型サイズという点で用途が重なる代替候補になる。
まとめ
PowerShot PICK は、カメラメーカー最大手のキヤノンが「撮り手が家族の輪に戻れる撮影体験」という単一のコンセプトに4万円の値札を付けてMakuakeに問いかけ、4日で1億円という市場の答えを引き出した稀な製品だ。発売から約5年経った2026年時点でも製品ページが保守され、ファームウェアが更新され続けている点は、クラウドファンディング発のガジェットとしては異例の息の長さで、「AI」ではなく「独自アルゴリズム」と言い切ったメーカーの姿勢とも整合している。一方で暗所・逆光の画質、バッテリー1時間半、USB PD非対応、Bluetooth1台制限という実使用上の粗さは残り、「4万円で何を買っているのか」の期待値調整は購入前に必須となる。
いま中古で検討している人へ。価格.com最安で約38,800円、Makuake時の早期割引価格40,900円とほぼ変わらない水準まで下がっている。逆に言えば大きく値崩れしておらず、中古流通も潤沢ではない。ファームウェアがまだ更新されている現役モデルであることを確認した上で、明るい場所での家族撮影・子どものリビング撮影が主用途の人には試す価値がある。暗所撮影が主目的なら期待値を合わせ直したほうがよい。
これから PowerShot PICK を買いたい人へ。新品は楽天市場・Amazon・キヤノンオンラインショップいずれでも入手可能だ。Canon公式ストアでの購入は保証・サポート面で最も確実だが、価格比較では楽天・Amazonのほうが安いケースが多い。なお、メディアが付けた「AIロボットカメラ」という呼称はキヤノン公式のものではない——キヤノン自身は一貫して「独自アルゴリズム」と表現しており、機能の実態を確認してから期待値を設定すること。購入前にUSB PD非対応・バッテリー約1時間半・Bluetooth1台制限の3点を自分の使用シーンと照らし、それでも「撮り手が写真に入れる設計」に価値を置けるなら、5年前の攻めたコンセプトはまだ実用の射程にある。
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Alex Ishiguro
編集長
MakuakeやCAMPFIREで話題になった商品の「その後」を追うメディアを運営。約束されたものが実際に届いたのか、消えてしまったのかを記録する。
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