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Zenchord 1——1.25億円集めた「AI議事録イヤホン」の内実

Alex Ishiguro 読了目安:8分
Zenchord 1——1.25億円集めた「AI議事録イヤホン」の内実
目次
  1. 1プロダクト概要
  2. 2クリエイター・プロフィール
  3. 3市場背景
  4. 4気になるポイント
  5. 5応援したいポイント
  6. 6比較・代替案
  7. 7まとめ

Notta × Zenchordが仕掛けたAIイヤホンが、MakuakeのAIイヤホンカテゴリ歴代1位の支援額を叩き出した。キャンペーン期間は2025年5月15日から7月14日までの約2ヶ月間で、終了から約9ヶ月が経過している。最終支援総額は約1億2,538万円、支援者5,388名、達成率12,538%〔確認済——Makuakeキャンペーンページ/2025年7月14日キャンペーン終了時点〕。2025年10月30日には大手量販店で一般販売が始まり〔確認済——Notta公式サイト/2025年10月〕、出荷後レビューも蓄積されつつある。

だが華々しい数字の裏で、販売責任者の突然の変更と1.5ヶ月の沈黙が支援者の信頼を大きく揺さぶった。「4,000社導入のAI」は何を意味し、月300分の無料枠はどこまで実用的か。出荷から半年が過ぎた今、訴求と実態の距離を検証する。

プロダクト概要

Notta×Zenchord共同開発のオープンイヤー型AIイヤホン、ケース単体録音・58言語文字起こし・LDAC対応の主要スペックと価格構成
出典:hirama1406.com

4,000社超が導入するAI音声認識ツール「Notta」と、香港BVグループ傘下の音響ブランド「Zenchord」の共同開発によるオープンイヤー型AIイヤホン。片耳約10g、TPU素材のイヤーフック採用で耳を塞がない設計。イヤホン本体と充電ケースに合計6基のマイクを搭載し、Bluetooth 6.0・Hi-Res/LDAC対応。充電ケース単体でもボイスレコーダーとして機能する点が最大の特徴で、録音→リアルタイム文字起こし(58言語対応)→要約までをNottaアプリ経由で処理する。バッテリーはイヤホン単体で最大10時間、ケース併用で最大30時間〔メーカー公称——Makuakeキャンペーンページ、独立検証なし〕。IPX4防水。

一般販売価格は26,980円(税込)。Makuake応援購入では28%OFF早割(300台限定・約19,430円)の単品セット、30%OFFデラックスセット早割(200台限定・約18,890円・専用収納バッグ付)などが設定された。限定特典としてNottaプレミアムプラン機能(文字起こし時間を除く)が無期限・追加費用なしで付帯し、文字起こし時間は月300分。

クリエイター・プロフィール

開発元Notta株式会社(Ryan Zhang代表)・日本販売元Acalie・音響パートナーZenchord/BVグループの三社体制と各社の背景
出典:cnet.com

開発元のNotta株式会社は2022年5月設立、代表Ryan Zhang(中国出身の連続起業家)、東京都千代田区大手町。従業員約100名(2026年1月時点)、資本金900万円〔確認済——国税庁法人番号公表サイト〕。約14億円の資金調達を実施し、SOC 2 Type I認証取得済みと発表〔メーカー公称——PR TIMES/2023年、独立検証なし〕。

日本正規販売元は株式会社Acalie(2017年11月設立、代表 中友孟涛、名古屋市西区)〔確認済——Acalie公式サイト/2026年4月確認〕。電動モビリティ事業(COSWHEEL・RICHBIT等)が主力で、愛知県のオープンイノベーション拠点STATION Ai入居企業。公式サイト上の取扱製品ラインナップに音響機器は確認できない〔確認済——Acalie公式サイト/2026年4月確認〕。

音響パートナーのZenchordは香港上場企業AU GROUP傘下のBVグループが所有するテクノロジーブランド(2014年設立)。「グラミー賞受賞アーティストに音響技術を提供」と公称するが、具体的なアーティスト名・作品名の開示はない〔メーカー公称——PR TIMES、独立検証なし〕。

市場背景

AIボイスレコーダー市場はPLAUD NoteやviaIM RecDotの登場で急速に立ち上がり、録音→文字起こし→要約の一気通貫処理はもはや珍しくない。Zenchord 1の差別化軸は「イヤホン+ケースのデュアル録音」と「Nottaエコシステムとの統合」にある。Notta社の公開製品ラインナップにハードウェアは確認できず〔確認済——Notta公式サイト/2026年4月確認〕、ソフトウェア企業がイヤホンを設計・製造するサプライチェーンリスクを吸収するため、BVグループ傘下のZenchordとの協業を選んだ構図だ。

Makuakeの活用目的は、資金調達よりも日本市場への先行プロモーションと見るのが自然だ。Nottaは日本法人を構え、14億円の外部資金を確保し、4,000社超の法人基盤を持つ。販路・資金力を既に持つ企業が先行割引チャネルとしてMakuakeを活用している構造であり、「市場検証」フレームは当てはまらない——1.25億円のキャンペーンは既存ユーザーベースへの周知として機能した。

気になるポイント

販売責任者の事後変更と1.5ヶ月の沈黙、バッテリー実測値の乖離、月300分の文字起こし枠制限、「世界初」表記の根拠不在
出典:ai-transcription-guide.jp

販売責任者の突然変更と47日間の沈黙。キャンペーン終了(2025年7月14日)から8月30日までの47日間、活動レポートが一切更新されなかった。沈黙が破られた8月30日の通知は「PSE対象製品につき販売責任者をNotta株式会社から株式会社Acalieに変更する」という内容で、「8月31日までに連絡がない場合は同意したものとみなす」という一方的な期限設定に支援者が反発した。瀬古高行氏はX上で「録音データを扱う製品なのに情報管理体制に不安」と懸念を示し〔確認済——X投稿/2025年8月30日〕、さんないゆーた氏も「炎上の根本原因は1.5ヶ月間の活動レポート未更新で不安が蓄積した点」と指摘している〔確認済——X投稿/2025年〕。音声データという機微情報を扱う製品で、販売責任者が事後通知で変更される体制は看過できない。しかも新販売責任者Acalieは電動モビリティ事業が主力で、公式サイトの製品ラインナップに音響機器の取扱実績が確認できない〔前述のとおり確認済〕——音声データを扱う製品の販売責任者としての実績面でも、読者が見極めるべき材料だ。

バッテリー公称値との乖離。メーカーは「イヤホン単体で最大10時間」と謳うが、我妻あかね氏はnoteで「100%充電で録音を開始して90分で残り20%になった。片方だけ」と報告〔確認済——note.com/2025年〕。録音+Bluetooth常時転送時の消費電力が音楽再生時と異なるのは当然だが、「最大10時間」が録音時の実態と大きく乖離するなら購入判断を誤らせる。

月300分の文字起こし枠と接続安定性。Makuake限定特典の文字起こし時間は月300分。我妻あかね氏は「60分の会議5回で使い切る。2日で確実に終わる」と指摘〔前述のとおり確認済〕。ヘビーユーザーには事実上の有料導線だ。さらに同氏は「アプリとの接続が切れがち。録音されていなかったことに後から気づくリスクがある」とも報告しており、greyblueroom.comのHaiao氏も「雑音の多い環境でのケース録音では精度が大幅に低下する」と述べている〔確認済——greyblueroom.com/2025年〕。中核機能の信頼性に関わる課題だ。

「世界初」表記の根拠不在。Acalie社は「世界初 AI議事録イヤホン」と銘打つが、同カテゴリのviaim RecDotが2024年に先行発売されており、「世界初」の根拠となる第三者調査は確認できない〔未確認——第三者機関の認定なし〕。先行製品があるカテゴリで「世界初」を訴求する場合、何が世界初かを具体的に示す責任は広告主側にある。

「4,000社導入」はNottaクラウドの実績、本体性能ではない。「4,000社導入」はNottaクラウドサービスの法人アカウント数であり、有料契約数とは限らない。Zenchord 1本体にAIが搭載されているわけではなく、録音→文字起こし→要約の処理はすべてクラウド経由——ハードウェアのスペックではなくサービスの実績である点を、読者は区別する必要がある。

応援したいポイント

ケース単体録音の実用性、Nottaエコシステムとのシームレス連携、急速充電とオープンイヤー設計の装着快適性
出典:newgadget3mai.com

ケース単体録音という着想。イヤホンを装着しづらい対面商談や会議で、充電ケースをテーブルに置きボタンひとつで録音できる。Business Insider Japanの実機レビューでは「会話が次々とテキスト化されてその場で確認でき、記者会見でのメモの取り方が大きく変わった」と評価されている〔確認済——Business Insider Japan/2025年〕。イヤホンとレコーダーの二刀流は利用シーンの幅を明確に広げる。

Nottaエコシステムとの統合力。いまいちど氏は「Notta連携で録音・文字起こし・要約が一気通貫で完結する」と評し〔確認済——いまいちど.ログ/2025年〕、じゃが氏も「Nottaとの連携は本当にシームレスで、録音した内容がすぐテキストになる」と述べている〔確認済——じゃが畑/2025年〕。法人基盤を持つNottaのエンジンとイヤホンが直結する体験は、単体のAIボイスレコーダーにはない強みだ。

急速充電とオープンイヤーの快適さ。じゃが氏は「10分充電すれば2時間使えるのが実用的」と急速充電を評価し〔前述のとおり確認済〕、ひでとし氏は「高精度に録音、文字起こし、要約、翻訳。期待通りの性能」と総合評価している〔確認済——ツブヤク。/2025年〕。片耳約10gのオープンイヤー設計は長時間装着の負担を抑える。なお、肯定的レビューの多くはPR提供品またはMakuake提供品に基づくものであり、価格.comにはレビュー・クチコミが0件である点は留意が必要だ〔確認済——kakaku.com、2026年4月確認〕。

比較・代替案

PLAUD Note Pro。ウェアラブル型AIボイスレコーダーの先駆者。カード型の薄い筐体をスマートフォン背面に貼り付けて使い、録音→文字起こし→要約をアプリで完結する。イヤホンではないため音楽再生機能はないが、目立たず自然に録音できる点で商談や取材向き。GPT-4o連携による高精度な要約が差別化ポイント。

その他の購入先

Anker Soundcore Work。クリップ型AIボイスレコーダー。襟元やバッグに装着し、録音品質と長時間稼働を両立する。専用アプリで文字起こし・要約に対応し、Zenchord 1と同等以下の価格帯。Ankerブランドの国内サポート体制は安心材料だ。

その他の購入先

viaim RecDot。ANCイヤホンとAIボイスレコーダーを一体化した製品で、Zenchord 1と最も直接的に競合する。2024年発売で録音→文字起こし→要約のクラウド処理に対応。「世界初」を謳うZenchord 1のカテゴリに先行して存在しており、機能比較は不可欠だ。Amazon.co.jpで購入可能。

その他の購入先

まとめ

Zenchord 1は、法人実績のあるNottaの音声認識基盤をイヤホンに統合し、ケース単体録音という独自の利用シーンを切り開いた製品だ。AIイヤホンカテゴリで1.25億円を集めた事実は、ビジネスパーソンの「会議を自動記録したい」という需要の大きさを映している。

一方で、販売責任者の事後変更と47日間の沈黙が露呈させたガバナンスの脆さ、バッテリー公称値と実測の乖離、月300分の枠の制約は軽視できない。「世界初」訴求の第三者的根拠が確認できない点、そして「4,000社導入」がNottaクラウドサービスの法人アカウント数でありハードウェア性能指標ではない点も、マーケティング表現と実態の距離として押さえておきたい。

いま中古で検討している人へ。ファームウェアとNottaアプリの継続アップデートが前提の製品であり、中古購入時はNottaアカウントの引き継ぎ可否とプレミアムプラン特典の移転条件を必ず確認すること。Makuake限定特典(Nottaプレミアム機能無期限無料)は初期支援者に紐づいている可能性が高く、中古では適用されない前提で予算を組むべきだ。

これからZenchord 1を買いたい人へ。一般販売価格26,980円はPLAUD Note ProやAnker Soundcore Workと同価格帯。購入前にNottaの無料プラン(月300分)で自分の会議頻度に足りるか試算し、不足なら年額プレミアムプランの追加コストを織り込んで判断したい。販売元はNotta株式会社ではなく株式会社Acalieである点も認識しておくべき情報だ。

その他の購入先

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A

Alex Ishiguro

編集長

MakuakeやCAMPFIREで話題になった商品の「その後」を追うメディアを運営。約束されたものが実際に届いたのか、消えてしまったのかを記録する。

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